育てた肉牛が、 11年ぶりに篠山市で開かれた兵庫県畜産共進会 (10月) と、 市共進会 (11月) で、 ともに最高位の名誉賞を獲得した。 全国共進会 (10月・鳥取県) でも県代表牛の1頭に選ばれるなど、 年間を通じて専門家の高い評価を受けた。 「丹波田中畜産」 牧場主任。
「県共進会はいわば牛飼いの目標。 各農家がその年で一番できのいい牛を連れてきます。 もちろん自信をもって出品しましたが、 名誉賞に決まった時は、 まだ若い自分がこんな賞をもらっていいのか、 という気持ちでした。 市共進会は、 県でトップを取ったあとだったので、 逆にプレッシャーが大きかったですね」
「名誉賞が一度だけだったら、 まぐれと思われてしまう。 毎年いい牛をつくられる農家と張り合えるようになりたい。 また、 篠山には過去に 『県共』 でチャンピオンを取った人も何人かおられるので、 やっと並べたかなと思っています」
「いい牛を育てるには、 素牛 (もとうし) の要素が4割、 飼養管理が6割だと思います。 素牛も自分で選んで買い付けます。 体重を増やすためにエサをできるだけ多く食べさせるので、 肉牛はいわば肥満。 病気にもかかりやすいので、 牛をよく観察し、 えさの食べ具合などを見て、 病気をすぐに見つけることが大事です」
「以前勤務していたJAで畜産担当になり、 神戸で枝肉のセリ市を初めて見た時、 この業界を 『面白い』 と思いました。 どうすれば肥育・繁殖農家の手取りを少しでも増やせるかというのが当時からの課題です」
「牛は本当なら長く生きられるのに、 人間の勝手で命をもらう。 天寿をまっとうせずに死んでいくのだから、 できれば最高の状態で売りに出してやりたい。 周りの人たちと牛への感謝を忘れないようにしています」
牛舎では、 3人で130頭を世話している。 同世代の経営陣らと意気投合した形でJA職員から牛飼いに転身した。 周囲も認める研究熱心。 ライバルたちと切磋琢磨しながら、 篠山牛のブランドをさらに育ててほしい。 篠山市大沢新。 32歳。
(徳舛 純)