県立柏原病院 (酒井國安院長) の4月1日時点の医師数が、 20人となる見通しであることが7日までに分かった。 現時点より、 5人の減少。 同病院に医師を派遣している神戸大学の人事異動などで、 8人が異動し、 後任があるのは1人のみ。 小児科は2人増える。 5年前に43人いた医師は、 半減することになる。 病床数も146床と今より68床減らす。 医師減少に伴い、 2年前に303床だった病床も半減することになる。
内科の1人が、 別病院での研修を希望し、 退職。 外科は1人が定年退職し、 2人が大学医局人事により異動。 整形外科の2人と、 泌尿器科の1人、 眼科の1人も医局人事で異動する。 眼科のみ、 後任の派遣がある。
小児科の増員は、 県外の病院で勤務する医師が、 「県立柏原病院の小児科を守る会」 の活動に感銘を受け、 本人の希望で同病院で勤務することになったことと、 同会の取り組みを評価する神戸大学附属病院の小児科教室からも常勤医1人が送られることによるもの。
外科は、 心臓血管が専門の医師が退職することで、 消化器外科のみになり、 外来診察日が減る見通し。 手術はこれまで通り行う。 1人となる整形外科は、 外来診察のみ6月末まで行う。 後任が派遣される眼科も、 開業までの7月末までの派遣となり、 整形外科と眼科は、 常勤医が不在になる見通し。 1人となる泌尿器科も手術が困難になる。
一方、 休診中の耳鼻いんこう科は、 兵庫医大から週2回程度、 非常勤医師の派遣を受け、 外来を再開する方向で調整中。 今年から常勤医が不在になり、 週1回、 非常勤医師が外来診察を続けている脳神経外科は、 4月以降も外来診察が継続できるよう神戸大学と調整を続けている。
(解説)医療資源を大切に
県立柏原病院の医師減少の原因は複合的で根深いが、 ひもといていくと、 柏原病院に患者が集まり過ぎたことに行き着く。 ピーク時でも43人と、 さして多くない人数で、 無理して軽症から重症まで、 ありとあらゆる患者を24時間365日引き受けていた。 医師は過剰とも言える地域の期待に応えようと頑張ったが、 疲弊し、 病院を去った。 それは、 最も患者が多く、 診療の柱として活躍してきた内科医の減少に顕著に現れている。
新医師臨床研修医制度により、 医師は自分の意志でしか動かなくなったと言われるが、 従来の医局人事で動く医師もいる。 柏原病院で勤務している医師の多くは、 後者だ。 医局に籍を置く医師は、 人事異動でさまざまな病院や大学をローテートし、 経験を積み、 技術を高める。 医局を離れることは、 技術を高めづらくなり、 勤務先を自ら探さなくてはならなくなり、 生活の不安定に直結する。
「あの病院になら医師を送ろう」 と大学医局が価値を見出せたり、 医局と縁を切ってでも勤務してみようと医師に思わせる 「何か」 が提示できない病院、 地域から医師が去るのは致し方ない。 患者は丹波でなくともいる。
小児科医が2人増えるのは、 「県立柏原病院の小児科を守る会」 が、 医師や大学に響く 「何か」 を提示できたからだ。 医師、 医療はかけがえのない資源で、 しかし、 それには限りがあることを知る。 過剰な要求はやめ、 少なくなった医療資源を大切に使う。 1人医師を失うことは、 千人単位で患者に影響が出る。 これ以上、 医療を失わないために、 今いる医師を大切に。(足立智和)