チャールトン・ヘストンが83歳で亡くなった。中高生の頃見た「十戒」、「ベンハー」や、「猿の惑星」などで米国のアイドル俳優だった。それら代表作ほど知られてはいないが、筆者には73年作のSF映画「ソイレント・グリーン」が最も印象に残っている。▼2022年のニューヨークが舞台で、ヘストンは刑事役。冒頭は、今やマンハッタンにただ1本、緑の木が残った場所に人々が群がるシーンだ。人口増加で資源や食料が枯渇、社会の格差は拡大し、人々はプランクトンを加工したと言われる食品「ソイレント」を配給されている。▼興味深かったのは、名脇役エドワード・ロビンソン扮する、ヘストンの親友の78歳の老人。「1944年生まれ」の証明書が映し出され、何と筆者と同い年なのだ。▼後期高齢者となった彼はその証明書を持って「ホーム」行きを希望。と言っても老人ホームではなく、安楽死を受け入れる施設だ。久々にありついたワインを飲み干しながら、久々に目にする大海原や花畑の映像に囲まれ、にこやかに息を引き取る。ドラマはここからが本番。あっと驚く展開を見せ、ヘストンの刑事が動き出すが、結末はとても書けない。▼現実の2022年までそう遠くなくなり、筆者も高齢目前となった。しかし、この映画のようにだけは、絶対してはなるまい。(E)