「小児科を守る会」学会で発表 感動与える

2008.05.02
丹波の地域医療特集

  「県立柏原病院の小児科を守る会」 の丹生裕子代表 (37) =市島町喜多=が4月26日、 東京国際フォーラムで開かれた 「第111回日本小児科学会学術集会」 で、 守る会の取り組みを発表した。 シンポジウムの座長が 「涙がこぼれそうになった」 と発言するなど、 全国から集まった小児科医に深い感銘を与えた。
 丹生代表は、 中澤誠氏 (総合南東北病院、 小児・生涯疾患研究所長) と同学会副会長の藤村正哲氏 (大阪府立母子保健総合医療センター総長) が座長を務める 「小児医療体制と小児科医のQOLを改善するための戦略―地域小児科センターの認定基準をめぐって」 と題した総合シンポジウムに登壇。 5人のシンポジストのトップを切り発表した。
 コンビニ受診を控える、 かかりつけ医を持つ、 医師に感謝の気持ちを伝える―の3つのスローガンに基づき、 医師に感謝の思いを伝える寄せ書きを贈り、 「ありがとうポスト」 を同病院小児科外来に設置したこと、 車にはるマグネットステッカーを作り地域へのスローガンの浸透をはかろうと努めていること、 病院受診の目安となるよう、 代表的な子どもの病的症状とその対応策を記した冊子を作成したことなど、 歩みを振り返った。 この4月からは、 小児科常勤医が2人増え、 一時は 「0」 になるかもしれなかった状態から、 事態が改善したこともあわせて伝えた。
 昨年4月20日に発足し、 会が1歳の誕生日を迎えたことに も触れ、 「医師と患者は医療を共に作るパートナー。 医師が働きやすく、 医療に理解のある地域づくりのため、 住民として何ができるか、 これからも考えたい」 と締めくくり、 約400人から大きな拍手を受けた。
  「こういった住民側からの動きに私たちができることはないのか」 との座長の問いかけに対し、 フロアの小児科医から、 「不安だから、 軽症でも受診をする。 不安を取り除くために、 私たちがボランティアでもっと地域に出て、 医療知識の普及に努めることが大切では」 などの意見が出された。
 中澤座長は、 「話を聞いた医師は、 大いに励まされたと思う。 『ありがとうポスト』 は、 画期的なこと。 投書というのは、 大抵どこの病院でも、 苦情が寄せられるもの。 それが柏原では、 感謝の言葉が書かれているなんて。 ぜひ全国に広めてほしい」 と絶賛。 客席の江原朗氏 (北海道大学大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野客員研究員) は、 「今の医療の問題の一つは、 医師に心の支援がないことだ。 特に地方では、 医師以外の医療スタッフ、 患者は地元の人で、 医師だけがよそもので孤独だ。 住民に支えられているという実感があれば、 医師はがんばれる。 必要とされている、 大切に思っているということを伝え行動する、 守る会の活動は素晴らしい」 と話していた。

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