オバマ氏

2008.07.17
丹波春秋

 米国大統領選の民主党候補、バラク・オバマ著「合衆国再生」(ダイヤモンド社)は、読みごたえがある。本の性格上、自身に都合悪いことは何も書かれていないが、日本以上に深刻な問題を数多く抱える同国の状況を彼が的確に認識していることは、よくわかった。▼シカゴの貧しい地区のNPOで3年間、社会活動家を務めたのは、まず州議会議員から政界の道を昇るためのステップだったのか、あるいは、その体験が彼を政治に目覚めさせたのか。多分、どちらも言えるのだろう。▼ともあれ、たった3年半前、連邦上院議員に当選するまでは、全国スルーでは無名だった46歳、アフリカ系のオバマが、徒手空拳からスタートして今や大統領に50%まで近づいた事実は、この国にもまだ希望が持てるのかも、と思わせる。▼「いま問題なのは、私たちの抱える課題の大きさと政治活動の貧弱さの間に横たわる溝だ。将来に希望を持ってはまた脅えているごく普通の市民に対して、政治は現実の暮らしを反映する必要がある。そのためには自分たちが一体どんなものを共有しているのかを認識する必要がある」という指摘は、そのまま日本にもあてはまる。▼実力は全く未知ながら、彼に「1度やらせて見ては」と関心を寄せるのは、こちらでも「勝手連」の小浜市民だけではあるまい。(E)

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