長らく積んでいた塩野七生著「ローマ人の物語」最終15巻を、この夏読み終えた。ローマ帝国の立ち上がりから崩壊まで、毎年1巻ずつ書き進められてきた同書の内容は、とても一言では言い尽くせないが、いかに繁栄をきわめているものも必ず消滅の時が来るという、ごく当たり前のことを再確認させられた。▼西ローマ帝国が476年、ついに崩壊し、「東」もやがてズタズタの状態に。原因は教科書も記す通り、長年に及ぶゲルマンなど北方蛮族の侵入に対し持ちこたえられなくなったためだ。▼それまでは彼らをうまく同化させ、帝国の防衛、治安の安定のために活用していたのに、この頃になると経済力も人材も払底し、その仕組みが機能しなくなった。▼崩壊の仕方は実に不思議だ。「いついつ、どこそこの攻防に破れ、蛮族の軍門に下った」と明確な史実があったわけではない。次の皇帝がいなくなって、と言うより「なり手がいなくなって」であろう、市民達でさえそのことに気付かないうちに消滅を迎えていた。▼最終末期の西ローマ帝国は、20年間に皇帝が9人代わり、帝国の体をまるでなしていない。古今東西を問わず、トップが居座るのは、良くも悪くもまだ安定している証左であって、めまぐるしく変わり出した方がそれこそ要注意と見るべきか。 (E)