「東国原知事が勤務する宮崎県庁舎が観光コースになり、警備員がマップを配ってガイド。向かいの特産館の売り上げは10倍に」という、谷垣友里さんの「ていー・たいむ」(本紙23日号)は面白かった。▼「2階なんかは昔、市民は上がれませんでした」という警備員の話は妙にリアル。全国小学生調査で「日本地図上での位置がわからない」の上位を占めていた宮崎の知名度をぐんと上げた功績は大きそうだ。▼関西にもテレビで名を上げた知事はいるが、こちらはズケズケものを言う所は買えても、時に切れたり泣いたり、いまひとつ器量が狭そうで、とても庁舎が観光コースにはなれそうにない。▼ただ、別の見方をすると政治はドラマではなく、首相や首長が人気に汲々としていて良いわけはない。苅部(かるべ)直・東大大学院教授は「政治的教養とは何か」という講演で「市民がアマチュアとして、政治の世界に外からの監視役として関わる思考法」を養う必要性を説いている。▼東国原知事の場合、今のところ本来の仕事をまずまずこなしているとの判断の上で、観光コースが成立しているのだろうと思いたいが、ゆめゆめ本末転倒にならぬよう。「有権者を政治に近づけた」、その次の段階のことを是非とも心してほしい。無論、丹波も含めたすべての政治家への注文である。 (E)