数年前、新聞のコラムに「東京から大阪に向かう新幹線の、普通は右車窓に見える富士山が左から見える地点が…」とあり、しかしどことは書いてないのですごく気にかかり、小田原か熱海かと、東京からの帰路のたびデッキに出て眺めていたが、いっこうに発見できなかった。▼ところが偶然にこの10月、ついに突き止めるに至った。東京行きの右窓側に座って本を読んでいて、ふと目を上げると田んぼの中に恐竜のオブジェ。「ここも恐竜化石の発見地なのか。さて場所は」と、浜松を過ぎたことは知っていたが、確かめるべく窓外を見続けていると…。▼結局、それは単なる業者のPR物体と後でわかったのだが、その時! 静岡駅手前の安倍川鉄橋にさしかかった時、前方にほんの一瞬、富士らしき山が目に飛び込んできたのである。灰色の雲が立ち込めるその上に、わずかに頭を出して。▼「多分、間違いない」。しかし、さほど高くは感じられず、百%の確信はなく、帰路にもう一度確かめようとしたが、雲はさらに厚くなっていた。そして帰路のみ新幹線だった12月初め、同じ場所で左側デッキに立つと、真っ白く輝いてもっと大きく、まぎれもなく富士山だった。▼数十秒ほどだが、角度的には「東京行きの右車窓」の方が断然見やすい。もっと早く発想の転換をすべきだった。(E)