経世済民

2008.12.15
丹波春秋

 ボーナスシーズンだ。雑学の本によると、明治9年に三菱商会が初めてボーナス制度を設けたとある。当時、三菱は海運界を独占していたらしい。ボーナスが中小企業にも浸透したのは、昭和に入ってからのこと。昭和10年には大企業の社員で370円、課長で1800円だった。▼これに対して工員は74円。大企業と比べてその差は歴然で、おすそ分け程度のお金しかもらえなかった。「戦後、労働組合が強くなってから明らかな不平等は改められた」と、本にあるが、格差社会といわれる現在、階層間の隔たりは再び深まっている。▼懸命に働いても、生活保護水準以下の生活しかできない人たちをいうワーキングプアが、一般に認識されたのは2年ほど前のこと。それが今では、派遣社員らの解雇、就職内定の取り消しと、働く機会すら奪われている。ボーナスどころではない厳しい現実だ。▼15歳から34歳までの若者のうち、学生を除いた非正規雇用者の割合は年々、上昇の傾向にあり、2006年で27・2%。明日を背負うべき若者たちの雇用が不安定化している現状には、暗たんたる思いがする。▼経済という言葉は、「経世済民」が由来と聞く。「世をおさめ、民をすくう」との意味だ。この言葉どおりの経済であってほしいと切に願う今年の年の瀬である。  (Y)

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