「かきねのかきねのまがりかど たきびだたきびだおちばたき」 誰でも知っているこの歌の作詞者は巽聖歌。岩手県紫波町出身。北原白秋に師事し、童話「ごん狐」の作家、新見南吉を世に知らしめた。▼聖歌に関心を持ったのはつい先日。所属する合唱団のクリスマス会で歌われた際、愛唱歌集に「昭和16年12月NHK子供テキスト」とあったのが目にとまり、「こんな曲が、大戦前夜に?」と不思議に思ったのがきっかけだった。▼インターネットで、聖歌がふる里で今なお慕われ、地元の「どっこ舎」からその詩と生涯について本が出ていることを知り、早速取り寄せた。「たきび」は案の定、「ラジオで放送されてすぐ、軍部から『たき火は敵の飛行機から目立つ』と中止させられた」とあった。軍にとっては、何やら気に食わない感じの歌だったのだろう。陽の目を見たのは戦後になってからだった。▼幼くして父を失った巽の家は貧しく、小学校を終えて家業を手伝わなくてはならなかった。同書には、童謡誌「赤い鳥」に17歳で初入選した次の詩も載っている。▼わたしは母に負われてた… 母はとっとと歩いてた 道に真赤な花畑 わたしは「なんだ」ときいたけど 母はとっとと歩いてた 私は背を揺りまた聞くと 「ぬけ首花」と言うたきり 母はとっとと歩いてた… (E)