10年前の4月、初代篠山市長の選挙が行われた。誕生したばかりの篠山市の舵取り役を決める選挙だったが、投票率は58・83%と、60%を切った。有権者の関心は全体に低かった。▼当時、篠山市を担当していた私は、市長選を振り返って本紙にこう書いた。「4月1日の篠山市誕生は、マスコミだけがはしゃいでいる、という印象を持つほど住民間の動きは総じて静かだった。合併に至るまでの住民の機運も今ひとつ低調だった。自分の生活に変わりがないかぎり、地方がどう変わろうとあまり関心がない、ということか。それがそのまま市長選の投票率に反映されたように思う」。▼合併から10年。市政や地域に対する住民の関心は深まっただろうか。住民が主人公になった地域活動は活発化しただろうか。気になるところだ。▼合併10年の今年、「丹波篠山築城400年祭」が開催される。4月から10月末までの7カ月間に多彩なイベントが繰り広げられる。そのスケジュールをみるかぎり、元気な篠山が伝わってくるのだが、最近、考えさせられる話を聞いた。▼ある地域団体の事務局を務めている人の嘆きだ。「地域のために、ひとつにまとまって自ら汗を流して動こうとしない。この気質は今も変わらない」。10年の月日に見合う分の成熟を、篠山はしたのだろうか。 (Y)