柏原病院の大西院長に聞く「再び活気ある病院に」

2009.05.26
丹波の地域医療特集

 4月から県立柏原病院の院長に就任した大西祥男氏に、 抱負と就任2カ月を前に現在の手ごたえなどを聞いた。 (聞き手は足立智和)

 ――就任後、 まず取り組んだことは
  「内科のシステムの変更だ。 私自身内科医で、 人数不足で機能低下していた内科を立て直してほしいというのが、 みなさんの願いと思っている。 4月に大学から派遣を受けた2人の内科医を含め、 6人で話をした。 これまでは主治医制で、 患者を1人で診ていたが、 チームで診ようと申し合わせた。 自分が主治医でない患者も、 当直隊でカバーしようというスタンスだ。 医師の疲弊が緩和され、 患者を多く受けられる」
 ――診療機能の回復具合は
  「平日の日勤帯 (午前9時―午後5時) と、 輪番日は夜間も救急患者を受け入れている。 また、 開業医からの内科紹介患者の当日受け入れも、 できる限り引き受ける。 紹介患者を中心に、 入院機能を充実したいという思いを、 内科を標榜している市内の開業医をたずね、 伝えた」
 ――院内の雰囲気は
  「内科で言うと、 就任日の入院患者は12人だったが、 15日は37人にまで回復した。 みな、 急に忙しくなったと感じていると思う。 全部門、 全部署ヒヤリングし、 あれこれ改善してほしい点を指摘しているので、 戸惑っている職員もいるだろう。 『活気ある病院に戻りたい』 という願いを持ち、 前向きに考えてくれている職員が多いので、 可能性を感じている」
 ――これから力を入れていくことは
  「消化器、 循環器内科の充実と、 この地域の特長の周産期医療の継続、 がん連携拠点病院としての機能に加え、 新たに内科系の総合診療科を考えている。 1人で複数の疾患のある患者さんもいる。 臓器別でなく、 人を診る医師を育てたい。 そのために、 柏原で総合診療をやってやろうという人材を発掘することが必要だ。 また、 入院の必要のない 『1次』 と言われる軽症患者は、 開業医にお願いし、 我々は入院が必要な患者を診るということについて、 地域全体の同意を得たい。 この構図がないと、 柏原病院の救急が永続的に続けられるか、 疑問だ」
 ――医療継続には、 若い医師を育てる 「教育機能」 が不可欠だが
  「柏原病院に欠けているのは、 若い力だ。 中堅、 ベテランの先生が多く、 大学から教授3人に来て頂いている。 指導医がマンツーマンで教えられる環境があり、 いい教育が提供できる。 私自身、 柏原病院の存在は知っていたが、 1度も来たことがなかった。 阪神間の医師は、 どんな機械があり、 どんな医療をやっているのか知らない。 若い人に病院を見てもらうため、 医学部の5、 6年生や前期研修中の医師を対象にした見学ツアーを夏に企画している。 神戸大学と柏原病院を行き来する研修プログラムも考えてもらっている。 技術を磨くだけでなく、 全人的な医療ができ、 人間的にも魅力的な医師像を若い医師に見せたい」
 ――最終的に、 どこまでの診療機能の回復を考えているか
  「内科も充実に向けて努力しているが、 今の人数で24時間365日救急を受けることはできない。 脳神経外科や整形外科も以前の形に戻るかと言われると、 分からない。 現時点ですべきことは、 疾患ごとの病院間の連携の明確化と強化だ。 『柏原病院で働きたい』 という医師を増やす。 そういう意味でも、 院内外の協力体制が不可欠だ」
 ―― 「小児科を守る会」 をはじめ、 住民グループの支えが盛んな地域だが
  「よそでは経験しないサポートを頂いている。 柏原病院を元気にし、 この地の医療をいいものにしたいという方向は同じ。 守ってもらえることはいいことだが、 それに甘えてはいけない。 みなさんの気持ちに、 診療という形で応えなければと思っている。 今の人数でできることを力いっぱいやっていきたい」

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