猫バスと木の根橋

2009.05.21
丹波春秋

 「猫バスはあと一時間木の根橋」。先日、柏原で開かれた田ステ女俳句ラリーの選者賞の1句。猫バスとは、アニメ「となりのトトロ」に登場する、巨大な猫が車体になって運転するバス。▼「投句の締切まであと1時間。その頃には猫バスがやって来そう」という意味だろうか。うっそうとした大ケヤキの下で、トトロの舞台のような幻想的な気分にひたれたのだろう。「季語がないのを承知で選んだ」(木割大雄さん)。▼大賞は初参加の西宮市の人で、「万緑を大万緑へ出て丹波」。「濁音5つは本来耳障りなのに、ものともしない勢い」(坪内稔典さん)。山田弘子さんが買った「いつしかにここも故里桐の花」。これも遠来の人で、温かい。各句とも、柏原の新緑をPRするキャッチコピーに拝借すればどうか。▼もう一つ、柏原で詠まれたと思いたい、捨女の実に技巧的な句。表彰式前の講演で小林孔氏が紹介して下さったもので、「龍田姫色染かへし新樹かな」。「龍田姫」とは、紅葉の女神。「古着がさらに変わった妙」という。▼特急が停まる町で、ど真ん中にこれほどのボリュームの緑があふれる所が、日本中にいかほどあるだろうか。ふだん見慣れている目には、気がつかれていない。「中心市街地活性化法」による事業が展開する中で、このことをしっかり認識したい。(E)

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