NHKアナウンサーの村上信夫さん(丹波市出身)と共に、俳優の児玉清さんとお会いした。村上さんの番組で児玉さんが「映画界で生きていく決意をするきっかけとなった」事件の話をしておられたのを思い出し、直接聞いてみた。▼―東宝1年目で全く無名だった児玉さんは、同い年ながらすでにスターとなっていた某氏についてロケ先で喫茶店に入った。気付いたウェーターがそのスターにサインをねだった後、そばにいた児玉さんにも色紙を差し出したが、スターは勝手に、「こいつは雑魚(ざこ)だから、いいよ」とはねつけた。▼児玉さんはある事情から東宝の試験を受けパスしていたのだが、この仕事にさほど未練はなく、「来年は普通の会社を受け直そう」と考えていた。しかしこれで、「ようし、やってやろうじゃないか」と、気持を切り替えた。これが「俳優児玉清」の出発点。思えば、今はとっくに映画界を去ったそのスターは、大恩人だったわけだ。▼同様の話を、新潟の会社の株式上場披露パーティーで聞いたことがある。社長が上場について取引銀行の支店長に相談したのに「出来るわけがない」と見下され、「1年以内に絶対実現してやる」と席を蹴った。ホテルにパーティーの予約まで取って、その通り実現した。人生は何事も前向きに。(E)