衆議院の実質的な解散権は内閣が持つとされ、つまるところは首相の胸三寸にあるはずだが、4年前の郵政解散の鮮やかさに比べ、今回の決まり方は何と落差のあることか。▼東京都議選結果の激烈さに多くの自民党議員がふるえあがり、ごたごたを続けた挙句、小選挙区制度のもとでは分裂もままならず、表向きだけ繕って選挙戦へ。▼思い起こせば4年前、圧勝した小泉さんの顔は緊張でこわばっていた。「『大変なことに』と思ったのではないか。なだれのように議席が増減する小選挙区制の効果。なりゆき次第では、次の選挙で大逆転される可能性だってある」―春秋子はこう書いた。それが現実化する気配である。▼民主党の勢いの源泉は、何と言っても「政権交代」というキャッチフレーズの単純明快さだ。それは前回の自民党の「郵政民営化」と同様。しかし、キャッチフレーズは明快であるほど、実が伴わなければ色あせる。今回も仮に功を奏したとしても、問題はその先である。▼今の段階でそこまで論じるのは気が早かろうが、とまれ、小選挙区制がスタートして10余年。その意味、その怖さを、政治家たちがようやく身を持って知り始めたことだけは確か。この激動期にこそ、一層クールにしたたかに権利を行使すべきが国民であることは言うまでもない。(E)