統計と真実

2009.07.21
丹波春秋

 柏原公共職業安定所の資料によると、5月の丹波地域の有効求人倍率は0・35で、1996年4月からの記録で見ると過去最低の月間求人倍率となった。雇用環境の厳しさが見て取れる数字だ。さぞや中年の職探しは、さらに厳しかろうと、資料にある年齢別の求人倍率を見てみた。すると、意外なことに若い年齢層に比べて大差がなかった。▼45―54歳の有効求人倍率は0・28、55―64歳は0・29。一方、20―34歳は0・34。中年の倍率はわずかに低いものの、その差はさほどない。▼理由は、雇用対策法にあった。一昨年10月から募集や採用に際して、原則として年齢制限をしてはならなくなったため、年齢層ごとの求人倍率にあまり差が見られなくなったのだ。しかし、実際は年齢が高くなると職探しは難しく、若い人に比べてこの倍率の差を上回る困難さがある。▼年齢制限の禁止は、労働者一人一人に均等な機会が与えられることをねらったもの。その趣旨はもっともなのだが、この改正のため、統計と現実に隔たりが生まれたのも事実だ。統計で示された数字が現実をそのまま映し出していると受け取るのは、ときに早合点になる。真実が隠されている場合もあるのだ。▼総選挙が近い。何が真実であり、何がそうでないかを見抜く力を持って判断を下したい。   (Y)

関連記事