墓参り

2009.09.24
丹波春秋

 昨秋、JAAの社長兼最高経営責任者に就任した自動車業界の若手経営者、田畑利彦氏が7月19日付の本紙「丹波人now」に登場し、「墓参りは趣味のようなもの」と話していた。仕事でストレスがたまったりすると、墓参りをする。「すると気持ちが落ち着く」のだという。▼共感する人も多かろう。墓に参ると、自然と心が穏やかになる。それはなぜなのか。そもそも墓とは何なのか。▼中国哲学史の研究者、加地伸行氏によると、儒教では、精神を「魂(こん)」といい、肉体を「魄(はく)」というらしい。生きているときは、魂と魄が重なり合っているのだが、死ぬと、魂と魄は分離する。▼空中にふわふわと漂う魂。その魂と、肉体である魄を一致融和させることができれば、死んだ人は再びこの世に帰ってこられる。そのためには魄を安全に管理しておく場所が必要で、その場所がお墓。つまり墓は、死んだ人をこの世に呼び戻すためのものであり、墓に行けば、死んだ人と出会えるというわけだ。▼墓参りをすると、先祖と出会える。それは、はるか昔から脈々と続く命の連鎖の中に今の自分がいることを確認することでもある。このとき、人は、命の連鎖に包まれた安心感を得るから、心が落ち着くのではないか。秋の彼岸。墓参りに行こうと思う。  (Y)

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