鳩山民主党政権がいよいよ発足する。少子化対策、年金・医療改革、地方主権、脱官僚支配、等々々々。これまでの自民党の政策より踏み込んだ盛りだくさんの公約を、いかに実行していくか、全国民が注目している。▼その中でひとつ気になるのは、「高速道路の無料化」である。「流通コストの削減を通じた地方経済の活性化」という導入理由だが、鉄道輸送も含めた、もっと総合的な判断が必要と思う。▼日本の鉄道輸送が質量ともに、世界最高水準を維持していることは、主な先進国をちょっと旅行すれば実感できる。大先輩の英国でさえ、無料の高速道路に押されて、鉄道会社はずたずたになっている。鉄道と道路の均衡を崩すと、思わぬ所でひずみが出るだろう。▼環境問題とのからみもある。次期政権は「温暖化ガスを2020年までに90年比25%削減」と、「8%」の現政権よりはるかに意欲的な目標を打ち出した。達成には相当の覚悟が必要だが、高速道路の無料化はこれとも矛盾する。▼車王国の米国でも最近はオバマ大統領が「グリーン・ニューデール」政策の一環として、鉄道輸送に目を向けている。石油燃料の枯渇化と共に、輸送の主流は鉄道に転じ始めたと言ってもよい。ともかく、目先の人気取りに堕さず、長期的な視野で政策を進めてほしい。 (E)