四国の知人の奥さんが、臨月になって流産。救急車で運ぶのも危険なほど出血し、ようやく母体だけは助かった。我が娘が昨年、近隣の市の産科で出産した際は、院長1人が1日に5件ほどこなし、廊下を歩く足音まで疲れて聞こえた。▼丹波医療再生ネットワーク主催で講演した愛知県の産婦人科勤務女医、野村麻実さんによると、月のうち半分以上が当直。勤務時間外でもいつ呼び出しが来るかわからないので、風呂にもケータイをビニールに包んで持ちこむとか。▼睡眠時間が不規則なので、睡眠薬を常用している医師も少なくなく、鬱になる人も。野村さん自身も2度身体を壊した。大学の指令であちこち転勤し、子供を持つ身で単身赴任も。10年がんばっていたが、「もう限界」と、お産を扱わない病院に移った。「本当は、産科が好きだし、環境さえ整えばいつでも戻りたい」。▼ひとつ間違えれば訴訟が待っており、そうでなくても患者は文句をつける。女医の診察を希望する妊婦が多く、20歳代の産婦人科医の7割を女性が占めるが、10年間お産を扱えるのはうち半分。先細りする一方という。▼東京でさえ、近くに産科医がいないので2人目のお産をためらう若夫婦を筆者も知っている。少子化対策として、子供手当もいいが、産科医の確保こそ喫緊の課題だ。(E)