景観は財産

2009.10.08
丹波春秋

 篠山・河原町の古い街並みを生かした「アートフェスティバル」の開会式で、「明治時代に、先人が鉄道を通すのを拒んだ結果、一時は町を衰退させていたのが、また今日のにぎわいをもたらすことになった」という話が出た。▼確かに当時、中心部のすぐそばに駅が出来ていたら、河原町も二階町も今頃は四角い建物ばかりになり、店は軒並み、シャッターを降ろしていたことだろう。▼江戸期の港と街並みを残した広島県・鞆の浦の一部を埋め立てて橋を通す計画に対して、裁判所が「景観は国民の財産」として、免許の差し止めを命じるという画期的な判決を下した。▼この地で「崖の上のポニョ」の構想を練ったという宮崎駿監督の「不便を忍んで生きる哲学を」という談話(朝日)は、「交通渋滞が切実」な推進派住民には反発を起こさせたかも知れない。しかし、原告の反対派にはトンネルを通す代替案もあるという。ここは篠山を初め全国の歴史的町並みをいま一度研究して、最善の計画を作ってほしいと、一国民として思う。▼かつて「謎の怪獣ネッシー」で有名な英国スコットランドのネス湖を訪れた時、日本ならきっと大観覧車が建つと思われる場所に、小さな資料館以外何ひとつなく、湖畔の崩れかけた城壁に腰かけて感慨にふけっていたのを思い出す。       (E)

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