人間とサル

2009.11.19
丹波春秋

 「俺たちはお前らよりよほど頭がいい。毛が3本多いんだぞ」と、傲慢に言い放つ人間に対して、「ご自慢の文明の機械とやらは自分の手足を退歩させ、ますます怠け者にするだけじゃないか」とサルは反論。鉄砲を取ってこようとする人間に、トチの実のつぶてを浴びせて逃げ去った。▼石川啄木が遺した寓話、「林中の譚(たん)」のことを先月書いた。サル学者の河合雅雄さんが最近出した絵本「人間」(大月書店刊)に、同じような意味のことを書いておられる。▼サルは熱帯雨林の木の上に住むことによって手足を発達させ、その後、外敵の多いサバンナに出るようになって石や棒を使うことを覚え、さらに「家族を作り、2本足で立って歩き、言葉を発明する」、この3つの条件を備えることによって、ヒトに進化していった。▼ところが、文明が進むにつれ、これらの3つを弱める力が働くように。「家族の結びつきが弱くなり、車の発達で歩かなくなり、携帯電話などによって直接の対話が少なくなっている」と氏は言う。▼「家族や地域で親切に、善良に暮らす一方で、戦争を繰り返す。善と悪の心をスウィッチのように切り替えられる人間って何なんだろう」と思ったのが、河合さんがサル研究に取り組むきっかけになったそうだ。さて、あなたの3本の毛は大丈夫?(E)

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