茶々(後に淀殿)、小督(おごう=後に徳川2代将軍正室)ら、お市の方の遺児3姉妹の面倒を伯父として見ていた、後の柏原藩主、織田信包(のぶかね)。彼らを描いた小説「美女いくさ」について作者の諸田玲子さんから取材して以来、彼女の人柄に魅かれて、すっかりファンになった。▼先日、NHKラジオで村上信夫さん(父が丹波出身)のインタビューを受けた諸田さんは、「なぜ時代物を」という質問に、「江戸時代で言えば、庶民の暮らしはずっと貧しかったかもしれないけれど、八方破れの明るさ、今はなくしているようなエネルギーを秘めていたのでは」と答えた。▼「人間というものは、百の言葉を尽くしてもとらえ切れない。歴史上で定説のある人物でも、先入観をなくして書き進めていくと、見えてくるものがある」。そして、「人に会う時、その人を好きになろう、良い部分を見よう、と思うように。もの書きになってから自分も変わった」とも。▼新聞・雑誌に7本同時連載中という彼女の作品は、どれを取っても内容の多彩さ、手に汗握る物語展開に魅かれる。また、登場人物を終始温かい目で見ていて、哀しい話も決定的な悲劇に終わってしまわないのがいい。▼歴史上の人物を多数輩出している丹波を舞台にした作品も是非執筆を、と、目下ラブコール中。(E)