先ごろ弊社の記者が結婚式を挙げた。そこで今回のコラムは、格言を交えた結婚考―。まずはイギリスの詩人、オスカー・ワイルドの言葉。「結婚して3日間は男も女も夢中である。…そして3年間はやさしく愛し合う。しかし、あとの30年間は、ともどもに我慢し合って生活していく」。▼辛らつな警句である。結婚とは我慢か。続いてビアスの『悪魔の辞典』から。「結婚とは、1人の主人と1人の主婦と2人の奴隷とから成り、それでいて全部合わせて2人にしかならない状態」。奴隷としてかしずくことを要求される結婚。夫婦生活とは忍従の連続か。▼我慢が続くと、夫婦間に隔たりができる。そこで思想家、モンテーニュの言葉。「結婚は鳥かごのようなものだ。外にいる鳥たちは中に入ろうとし、中にいる鳥たちは外に出ようともがく」。▼そんな山あり谷ありの夫婦生活だが、歳月を重ねると、言いがたい味わいが出てくる。先のオスカーの言葉には、続きがある。「お互いがすっかり鼻についてから、夫婦の本当の愛情が湧いてくる」。▼ともに人生を歩み、悲喜を分け合った間柄。だからこそ、言葉を交わさなくても通じ合う深い愛情でつながる。最後にドイツ文学者、登張(とばり)竹風の句。「名月やただ老妻と相対す」。夫婦もここまで来ると、枯淡の趣がある。(Y)