ヤマとヤミーという夫婦がいた。遠い遠い昔のこと。ヤマはこの人間世界で初めての男性で、ヤミーは初めての女性だった。仲のいい夫婦だったが、ある日、ヤマが死んだ。伴侶を失ったヤミーは悲しみに沈んだ。▼この当時の世界には、昼も夜もなかった。つまり、1日の別がなかった。いくら時間がたっても、「きょう」だった。「ヤマはきょう死んだ」と嘆くヤミーは、悲しみの涙を流し続けた。▼このままでは、ヤミーはやつれ果ててしまうと心配した神々が、夜をつくった。夜ができ、1日ができたおかげで、「きょう死んだ」が次の日には「きのう死んだ」になり、2日目には「おととい死んだ」となった。こうして1日1日が経過しているうちに、ヤミーの悲しみは薄れていった。以上は、古代インドの説話にある「昼夜の起源の物語」である。▼日は沈み、日はまた昇る。いろいろあった「きょう」であっても、日が沈めば過ぎ去り、新しい「明日」が始まる。1日の区切りがあることで、「きょう」とは違う「明日」に期待が持てる。そのおかげで私たちは救われる。▼2009年もあとわずかになった。新しい1年がまもなく始まる。1日と同様に1年があることで、私たちは新しい年に希望を持てる。読者の皆様にとって、来年も(は)いい年でありますように。 (Y)