災難を逃れる妙法

2010.01.18
丹波春秋

 地質にくわしい氷上町の荻野正裕さんによると、関東大震災の発生後、日本で一番安全な地域へ遷都してはどうかの話があがり、その候補地として丹波山地が浮上したという。そんな安全神話が今も底流としてあるのか、丹波地域に住んでいる人たちは、自分たちの地域で大地震は起きることはないと考えている傾向がみられるという。▼そんな安全神話に対して、荻野さんは「地震は、よそ事ではない」と指摘。「地震は起きるものだという心構えを持つことが大切だ」と説く。▼良寛の「災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候」を思い起こす。1828年、越後の三条を中心に大地震が発生。死者は1400人を超えたらしい。この地震のあと、良寛は、みずからの無事を伝えた手紙に先の言葉をしたためた。▼災難に遭い、じたばたしても仕方ない。クモの巣にからめとられた虫のように、もがくほどクモの糸にがんじがらめになる。いっそ災難にどっぷり浸かってしまえばいい。それこそが、良寛の言う「災難を逃れる妙法」なのだろう。▼とはいえ、災難に遭ってじたばたするな、というのは酷なもの。凡人には及ばない良寛の態度だが、少しでもじたばたしないためには、地震は起きるものと覚悟を決めておくことだ。それも、災難に処する妙法だろう。(Y)

関連記事