丹波篠山ビデオ大賞コンテストは、今年も力作がそろった。決勝に進んだ8作品のうち、筆者は「自書伝―あいスマイル編」(日ノ本学園高校放送部)と「やっかいもの見直したい―丹波篠山・竹取物語」(稲川和代さん)を高く評価したが、やはりそれぞれ大賞と知事賞(準大賞に相当)を獲得した。▼「自書伝」は、引きこもり中学生の母親たちの運動で彼らのくつろげる教室が出来、先生ら周りの温かい雰囲気の中で学校になじんでいく様子が淡々と描かれていた。▼制作の中心になった女生徒、松原愛さん自身がその教室の1期生。画面に出てくるのは後輩たちだが、皆悪びれもせず、楽しそうな雰囲気に胸をうたれた。そしてまた、今は大学生になった愛さんの、引きこもりだったとは思えないほどの満面の笑顔が実にさわやかだった。▼稲川さんの作品は、篠山城の堀端で荒れ果てた竹薮を、地権者らが「放っといてくれ」というのを説得し、大変な作業を重ねてきれいに整備。あずまやを作って憩いの場にし、竹細工で住民の交流を重ねるという記録。登場する人たちの笑顔がこれまた素敵だった。▼21回を重ねた同コンテスト。美しい伝統工芸や職人技、ユニークな趣味などの映像も確かに魅力だが、こうした社会性を持った作品が着実に根付いてきたのは、嬉しい。 (E)