アカデミー賞で、3Dの立体映像を駆使して空前のヒット作となった「アバター」(キャメロン監督)を押しのけ、その元妻が監督する「ハート・ロッカー」が6冠を射止めたと、話題になっている。▼同作品は、イラク戦争で爆弾処理に当たる兵士らを描いた社会性に富んだ作品。一方、「アバター」は、地球からはるか遠い異星「パンドラ」を舞台にしたSF娯楽作だが、専門家の目は厳しかったのか。▼確かに、遺伝子を組み込ませたハイブリッドの肉体に特殊装置によって意識を送り込み、遠隔操作で活動させるという設定は、いかにも漫画チックで雑ぱくなところもある。▼しかしこの作品には、最新技術や娯楽性という触れ込みには隠されたメッセージも秘められているように、筆者は感じた。パンドラの密林に住む、弓矢が武器の原住民たちに、「資源がほしい」という理由だけで地球人の近代兵器が攻め込むシーンは、その昔、アメリカ新大陸を西洋人が完膚なきまでに略奪していった姿を連想させる。▼どんな生き物であれ、大事な生態系の一部を形成しているというパンドラの大自然は、人類が忘れかけた地球のすばらしさを示しているようでもある。「タイタニック」では、船倉の最底部にひしめくアイルランド人に目を向けたキャメロン監督に、引き続き注目。(E)