卒業式の季節だ。卒業式の歌といえば「蛍の光」だが、ご承知のようにこの歌詞は「蛍雪の功」をもとにしている。昔、中国で、蛍の光や雪明りを灯火のかわりにして書を読んだという苦労人のエピソードからきている「蛍雪の功」。この言葉から連想する人物のひとりが春日町出身の国文学者、三浦圭三だ。▼三浦は、明治18年の生まれ。高等小学校を卒業したあと、恩師に誘われて青垣町の貸し家に恩師と2人で住み、教えを受けた。佐治尋常小学校の代用教員となった三浦は、学校に宿直しながら勉強に励んだ。▼貧しいため、参考書を買うこともままならず、同僚らから本を借り、一つ一つ書き写して学んだ。数学の勉強をするときなどは、紙の裏表に鉛筆で書き、次は両面を墨で書き、最後は朱で書くなど、1枚の紙も粗末にしなかった。英語だけでなく、ドイツ語も独学。その一方で家への仕送りも忘れなかった。▼大正11年、弘前高等学校(今の弘前大学)の教授に就任。小学校卒業の学歴で高等学校教授になった三浦は、同じように独学に励む地方の青年にとって希望の星だった。三浦はまさに、蛍雪の功を地で行った。▼そんな蛍雪の功を歌った「蛍の光」は今、卒業式であまり歌われなくなったようだが、刻苦勉励の精神は時代遅れにならずにいてほしい。(Y)