「達者でポックリ。」

2010.04.01
丹波春秋

 高齢者として2度目の誕生日に、「達者でポックリ。」(東洋経済新報社)という本を贈られた。西行のように、寿命を全うした春、望月の宵、花の下で逝くことを願う我が身には、うってつけの書。▼著者の帯津良一氏は癌手術に明け暮れる外科医だったが、個別の内臓ごとに対処する治療に疑問を感じ、身体の中の空間、つまり「生命の場」にこそ健康の源があることに気付いた。以来、西洋医学に気功や音楽療法ほか様々な代替療法を取り入れている。▼最も共鳴したのは、「私は『死』が実に楽しみです」という、冒頭の一節。「『死』とは、ビッグバン以前の世界である『虚空』に帰っていくこと。死を突き破って旅立つために必要なエネルギーを高め続けることが、『ポックリ』の秘訣」という。▼春秋子は以前、生死の境をさまよった人の証言を集めて検証した「臨死体験」(立花隆著)を読み、「どうやら、この世だけがあるわけではないらしい」という気になっているので、「死後」を見据えての健康論には、大いに心を揺り動かされる。▼示された色々な実践方法は紹介仕切れないが、突き詰めて言えば、立花氏も言っているように「生きている間にしか出来ないことを、思い切りしておく」ということではないか。折りにふれて死を想いつつ、毎日を大事にしてゆきたい。(E)

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