ROLLYという若者に人気のミュージシャンが、NHKラジオの村上信夫さんとの対談で、「子供の頃は肥満で引っ込み思案だったので、よくいじめられた」と話していた。▼母に泣きつくと、決まって「打たれ強くなったら、将来のためにきっといい」と言われ、そのうち「今度はどんな面白いいじめ方してくるやろ」と開き直ったという。▼この話を聞いて、先日、シルバーエコーささやまの合唱指導に来た、東洋人初のウィーン国立歌劇団員、アンネット・カズエ・ストゥルナートさんのことを思った。彼女も小学4年の時、中国から父の田舎に引き上げ、日本語も不自由とあって、いじめの標的に。▼苦学して好きな音楽の道に進んだものの、日本では音大出でないと浮かばれないと身にしみて知り、31歳の時、単身ウィーンへ。国立歌劇団のオーディションに合格するが、今度は露骨な人種差別に。たまたま演出に来た指揮者カラヤンの目にとまり、彼のとりなしで、4年間続いた差別からようやく解放された。▼「自殺を企てたほどでしたが、何とか耐えられたのは、子供の時に受けたいじめのお陰。日本には2度と帰らないだろうと思っていたのに、今は恨むどころか、感謝しています」。才能が潰されず花開くまでには、どんなことがどう結果するか、わからない。 (E)