先ごろ春日で開かれた「特別支援教育フォーラム」で、「『おたがいさま』と言える風土が残っていることが、特別支援教育を進める上でのキーワードになる」との発言があったという。同感であるとともに、「おたがいさま」の知恵を再評価したい。▼「情けは人の為ならず」ということわざがある。人に情けをかけると、巡り巡って自分によい報いがあるという意味だが、誤って理解している人が最近は少なくない。人に情けをかけることは甘やかすことで、その人のためにならないという解釈だ。▼この誤解には、自分も情けをかけてもらう立場になるという視点が欠落している。あるいは自分が情けを受けるのは当然の権利であると思っているのだろう。人への情けは拒み、自分への情けは当然とする。まったく虫が良すぎる。▼情けをかけたり、かけられたり。迷惑をかけたり、かけられたり。支えたり、支えられたり。私たちの先祖は、こうした間柄こそ望ましいとし、「おたがいさま」という知恵を生み出した。相互扶助、共生などの難しい言葉は使わず、「おたがいさま」という誰にもわかる言葉を、共に生きる知恵とした。▼しかし、「情けは人の為ならず」の誤解が生まれたのは、「おたがいさま」が私たちの日常から消え出したことの裏返しである。反省したい。(Y)