日本のタクシー

2010.07.08
丹波春秋

 先日、大阪行きの電車が20分以上遅れ、約束に遅れそうになったのでタクシーを拾い、相手に了解をとる電話を入れた。運転手さんが「さっきも会社に連絡してる女子社員がいて、上司から『何故余裕を持って出社しない?』とか言われたらしく、プンプン怒ってましたよ」。▼70何歳だかの個人タクシー。「私も喧嘩っ早い方でね。免許証の更新で視力検査の字が見えにくいので、別の眼鏡で色々試そうとすると、係りの女の警官が『そういうのは認められません』やて。『これまでお宅の署には精々協力してきたのに、もうええわ。こっちも考えるさかいな』と、ケツまくって帰ろとしたら、奥から男の警官が飛んで来よった」。▼「そら、おかしいですよね。自分の眼鏡やのに。近頃の若い人はマニュアルに書いてあること以外は、自分で判断出来ないんやな」と相槌を打っていると、どんどん話し出し、「大阪の客は『おっさん、天満まで』と、ぶっきらぼうに言うて乗り込む。そういう時は私、一言もしゃべりまへんのや」。▼「私は四国のこの小さい島で育ちましてん」と古びた写真を取り出しながら、「この分やと、何とか間に合いまっせ」と時計を見るのも怠らない。▼着いたら「まあ、缶コーヒーでも買うてや」と、百円バックしてくれた。これだから日本のタクシーは良い。(E)

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