「空き店舗や更地が増えたまちを、佐治に住む者として何とかしたい」。そんな住民の思いをエネルギーにしたイベントが、青垣町佐治で定期的に開催されている。「丹波布の里まつり」。丹波布を核に据え、多彩な催しを展開。佐治に来て遊びたいという人たちを掘り起こそうとしている。▼イベントの名前になっている丹波布は、古くは佐治木綿と呼ばれた。明治末期まで佐治の農家で盛んに織られたが、その後、衰退した歴史を持つ。復興のきっかけをつくったのは、庶民の暮らしの中から生み出された実用的な工芸品に「美」を見いだした柳宗悦だった。▼京都の朝市で佐治木綿を見つけた柳は、その美しさに感動。産地の調査を工芸研究家の上村六郎に依頼した。上村らの尽力で1953年、丹波布復興協会が結成され、丹波布はよみがえった。柳が、丹波布と命名。今では丹波布伝承館もつくられ、普及がずいぶん進んでいる。▼一度はさびれた丹波布。その丹波布が、かつて宿場町として栄え、今では空き店舗の増えた佐治の町の牽引車として期待されている。▼柳らの研究家は丹波布復興の恩人ではあるが、原動力になったのは、復興に思いを寄せる住民らの熱意だった。丹波布がよみがえったように、住民らの熱意で佐治の町が活気づくことを期待したい。(Y)