教育システム改革を
(ふじもと いちろう)石川県能美市在住
1951年 (昭和26)、 篠山市今田町黒石生まれ。 篠山鳳鳴高、 東京大学卒。 広島、 フロリダ両大学大学院修了後、 同大学客員教授を経て、 98年から金沢工業大学教授。
今年4月、 全国の大学教授らでつくる工学系数学基礎教育研究会の代表に就任。 「アメリカの大学教育と比べ、 授業時間が半分ほどしかないなど、 旧態依然とした日本の大学は遅れていると言わざるを得ない」 と分析し、 「技術の日本」 の復権に向け、 教育システムの改革を目指す。
専門は数理物理学と関数解析学。 自然現象と、 それを支配する数字の相関関係を調べる研究だ。 近年では、 他教授との共同で、 現在とは比較にならないほどの速度で情報を伝達することができる 「量子情報理論」 を研究。 数学的なアプローチで理論構築に挑んでいる。
昔から数学が大好きだった。 難問に対し、 自分なりの解決法を生み出して回答を導き出す。 「想像力を働かせるのが数学の楽しさ」 と言いつつ、 「暗記することは苦手だったので、 テストはあまり良くなかった」 とはにかむ。
フロリダ大学大学院で数理物理学の重鎮教授から薫陶を受け、 12年間、 米国で生活した後、 日本に帰国。 1998年には、 47歳の若さで金沢工業大学教授に就任した。
多忙な日々の中、 まぶたの裏に映るのは、 篠山の情景。 駆け回った里山、 毎日のように釣りをした小川―。 月に1度は、 大切に育てている畑の野菜の世話をするため、 故郷に戻るほど地元への思いは強い。
「地元では今でも友人たちが迎えてくれ、 とてもうれしい。 一方、 里山の荒廃も目の当たりにする。 退職後は、 地元に帰り、 地域の自然環境を守るような活動ができれば」
東京大卒業後は、 日米両国の大学院に通った。 「回り道が多かったけれど、 自分のやりたいことをあきらめないことの大切さを学んだ。 若い学生たちも、 夢を貫き通してほしい」 とエールを送る。