“宇宙の合金”で大発見
(こつぎ まさと)たつの市在住
1974 (昭和49) 年、 篠山市丹南町生まれ。 篠山鳳鳴高、 上智大理工学部卒。 大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。 マックスプランク研究所 (ドイツ)、 広島大研究員を経て2007年より現職。
播磨科学公園都市にある、 最先端の大型放射光施設 「スプリング8」 の光電子顕微鏡を使って、 様々な金属材料の研究をしている。
最近の大発見は、 鉄とニッケルを含んだ鉄隕石の組成構造。 46億年前に出来た小惑星のカケラであるこの隕石が、 人工の合金とは全く異なり、 「高い保磁力 (周辺の磁気の影響を受けにくい)」と「磁気異方性 (磁石になる向きが決まっている)」 を持っていることは知られていたが、 その理由がわからなかった。
小嗣さんらのチームはこの隕石の鉄とニッケルの境界面では、 地上の磁石のようにNとN、 SとSが反発せずに向かい合うという不思議な状態になっていることを突き止め、 その原因として、 1万分の1ミリメートルほどの薄い膜が存在し、 双方の金属の原子が非常にきれいな形で交互に並んでいることを解明した。
「宇宙が産み出した合金は悠久の時間をかけて冷やされていくうちに、 極めて精巧な構造を形成し、 地上ではあり得ない性質をもたらしたと考えられます」。 この構造をモデルに人工的に合金を作ることが出来たら、 画期的な発明になる。 「コンピューターの記憶装置に取り入れれば、 より小型で高密度となり、 電源を完全に遮断しても情報が保全されるので相当の省エネが出来ます」。 目下、 その研究に取り組んでいるところだ。
スプリング8は、 割り当て時間に集中して観測しなければならないので、数日間、仮眠しながら徹夜することも。
やはり民間企業の研究職に就いた兄の影響で、 高校時代から研究者をめざしていた。 「隕石に出会えたのは、 自然への畏敬という思いをずっと持っていたからでしょう。 少年時代、 山や川を跳びまわって過ごせたのは、 ありがたかったですね」。 (外野英吉)