晩秋の砥峰(とのみね)・峰山高原にドライブした。多可町境のトンネルを越え、神崎郡神河町に入って小一時間。播但線沿いの道を左折し、勾配のきつくなった山中をダム湖を見降ろしながらくねくね進むと、急に視界が開ける。▼茶一色の砥峰高原は、見渡す限りススキの穂が揺れていた。時雨の合間に淡い陽が射し、山々の紅葉と混然。ここは来週封切の映画、村上春樹原作「ノルウェイの森」のロケに使われ、入りこみ客が倍増したとか。▼主人公「僕」は心を病んだ恋人、直子のいる療養所を訪ねて行く。京都の山奥でバスを降り、高原の広い雑木林を抜けた先は、まさにこんな所だったのだろう。心の深奥で触れ合う彼らを包み込み、秋、冬、さらに春へと、クライマックスに導いていく舞台として、撮影は1年がかりで行われた。▼砥峰に隣接する峰山高原のホテルへ。背後の雑木林の散策路の奥にも「撮影地」の標識が立っていた。落ち葉が地面に舞うだけの裸の林は、これまたぴったりのイメージ。ここは当初は予定外だったが、スタッフらと滞在したトラン・アン・ユン監督がすっかり気に入り、撮影に加えたという。▼ベトナム系フランス人で数多く国際賞をとったという同監督には馴染みがないが、松山ケンイチと菊地凛子の配役は悪くない。封切が楽しみだ。(E)