丹波ちりめんや西陣織に用いられる絹を供給する県内唯一の養蚕農家で、 伝統文化の継承に尽くしたとして兵庫県芸術文化協会の 「ふるさと文化賞」 を受賞した。 14日、 県民会館 (神戸市) で贈呈式が行われる。 今年度は県内で柿原さんを含む3人が受賞した。
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「代々続く養蚕農家。 20歳のころからこの道に入り、 50年以上になります。 1980年ごろのピーク時には、 まゆで1700キロほど生産していましたが、 現在は300キロほどです。 着物離れが進み、 海外から安い製品も入ってきた。 まゆの値段が下がり、 徐々に養蚕農家も減り、 県内で私だけになったのは、 10年ほど前です」
「『まだ (養蚕農家を) やっとってん』 と聞かれることがありますが、 私は蚕を育てることしか知らない。 当たり前のことになっています」
「県内で1人―と言われる今になると、 珍しがって見に来てくれる人がいたり、 学校が教材として使ってくれるようになりました。 時代の流れとはいえ、 人様とのふれあいがあり、 続けてきてよかったと思います。 伝統産業を懐かしがり、 見直してもらうきっかけになればとも思います」
「農業や産業分野なら分かるが、 ふるさと文化に貢献したというような気持ちはなかったので、 受賞の知らせは寝耳に水でしたが、 喜んで受けさせてもらうことにしました。 『伝統文化の継承』 とあり、 次の世代につなげたらよいのですが、 難しい状況です。 その点においては、 すいませんという感じです。 でも、 自分ができる間は続けるつもりです」
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県内でただ1人となったことも 「時代の流れ」 と受け止め、 「自分が死んだ後のことを考えてもしょうがない」 と笑う。 年齢を感じさせないはつらつとした姿に、 まだまだ養蚕農家の心意気は、 丹波の地で小さいながらもしっかりと灯り続けると感じた。 丹波市春日町中山。 74歳。