「東日本大震災の義援金は分割払いにしてください」と訴える栗木剛さんの講演に『なるほど』と思った(本紙4月10日6面参照)。メディアは今、震災一色だが、いつか必ず震災のことが大きく取り上げられない日がやって来る。▼被災地は復興していないのに、その実情が十分に伝わらない。それは義援金の激減につながる。阪神淡路大震災の被災者でもある栗木さんは「被災地にとって、ずっと続く義援金の方がありがたい」と呼びかける。義援金を分割払いすることは、被災者の方々を思い続けることでもある。▼メディアは元来、移り気なものだ。伝達される情報は、大衆の好奇心に訴えられるものが選ばれる。東日本大震災を上回るようなビッグニュースは、めったにあるものではないが、いつか他のニュースにシフトするときが来る。そんなメディア情報の環境下になっても、被災地に対する今の気持ちを持ち続けられるか。▼阪神大震災でも、その後に起きた地下鉄サリン事件で影が薄れた。ヒトラーが「大衆のさまざまな能力は低いが、忘却の能力だけは高い」と喝破したように、私たちはどんなに心を痛めた悲しい出来事も、歳月の流れに置き去りにしてしまう嫌いがある。▼東日本大震災からほぼ1カ月。これからもずっと被災地を思い続けることを誓いたい。(Y)