なでしこ

2011.07.27
丹波春秋

 なでしこの実物をあまり見たことがなく、花屋で買ってきた。なるほど、白や薄紫、ピンクの清楚な花だ。▼「撫でるように大事に育てられた姫」から来た「大和なでしこ」の第1号は、古事記に登場する「櫛名田比売(くしなだひめ)」とか。出雲のヤマタノオロチの生贄にされるところを、通りかかったスサノオに助けられ、妻になったという。▼おとなしく、なよやかだが、芯はしっかりしているイメージ。しかし時代は下り、少しも撫でられずに育った「なでしこジャパン」はいささか違ってくる。決しておとなしくはなく、なよやかというより、しなやか。▼ただ、しっかりした芯をちゃんと受け継いでいる点は、ワールドカップ決勝で対戦したアメリカンガールたちに比べると、はっきりする。ひまわりのように華やかな彼女らは意外にもろく、PK合戦まで追いつかれると、ポキっと折れてしまった。▼櫛に変身した櫛名田比売は相当おしゃれだったに違いないが、それにかけても「今なでしこ」は負けないようで、秘かにネイルをして楽しんでいる。真っ黒な顔の彼女らが、いずれは先輩のファッショナブルなテレビ解説者のように変身するのかと、想像するのはちと早いか。とまれ、熱狂的なマスコミへのサービスはそろそろ控え、来たる五輪予選に備えてほしい。 (E)

 

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