加古川源流の一つ、 青垣町小稗の小稗川上流で、 水ワサビ栽培の研究が行われている。 研究を始め4年目、 かつて山中に自生していた大きさまで葉は栽培できるところまでたどり着いたが、 目指す本ワサビ (地下茎) は小指くらいのサイズ。 商品価値の出る親指サイズまではなかなか。 ワサビは暑さに弱く、 夏場をどう乗り切るか、 知恵を絞っている。
丹波市最高峰の粟ヶ峰 (962メートル) の南側の谷で、 川の水を引き込む 「渓流式」 と呼ばれる方法で栽培。 同地区の足立隆さん (67) が、 林の一部を切り開き、 2アールほどのワサビ園を整備した。 1メートルほど掘り下げ、 岩、 瓦礫、 小石を順番に敷き詰めて透水性を良くした。
知人からもらった75本の苗から始め、 ここ2年は種から育て、 600本まで増やし、 周囲をシカよけの柵で覆った。 ビニールパイプを輪切りにして株を沢ガニから守ったり、 園内の水の入れ替わりが早くなるように、 こう配をつけたり、 引き込みパイプを土中に埋めたりと、 水温上昇抑制に試行錯誤を続けている。
猛暑の昨年は、 水温が21度まで上がり、 本ワサビまで後一歩の 「3年もの」 の株の根が腐敗、 3分の1ほどを失った。 「水温は12―14度、 最高でも18度くらいに抑えないといけない。 今年も、 もう19度くらいになっている」 と、 表情を曇らす。
冷たい水を大量に流し、 酸素を含んだ水を動かすことの重要性を再認識し、 増設した園では、 砂の代わりに小石を敷くなど、 さらに透水性の高い構造に変えた。
現在地より山の奥深く、 より水温が低い場所の方が栽培に好ましいことや、 富士山やアルプスといった豊富な水を使っている 「本場」 の栽培方法が、 小稗には不向きなこと、 本場と比べ成長に倍の時間がかかることなど、 分かったことも多い。
「水が良い加古川源流の良さを残したい。 良さの証明になればとワサビを育てている。 昔と同じ葉ワサビはできても、 それを超えるのが難しいが、 ものになるのかならないのか、 10年は試したい」 と話している。