大臣に指名され総理室から出るや、「おめでとうございます」と待ち構えていた省幹部に早速、秘書の人選、就任会見での挨拶文等々、用意周到に出迎えられる。菅直人氏が初入閣時の体験を官僚に批判的に書いた「大臣」は名著だった。▼初めての大臣の椅子を放射能発言のため9日間で棒に振った前経産相は、官僚の掌中に乗せられるどころか、舞い上がってしまっていた。▼原発対策、TPP、円高―難問山積の経産省が抱えるもう一つの宿題に「古賀問題」がある。ベストセラーになった「日本中枢の崩壊」の著者、改革派官僚の古賀茂明氏は同省でそれこそ中枢ポストを歴任して来た人だが、省益優先の官僚体制を内部から鋭く批判して上からにらまれ、「官房付」という何の仕事もないポストに、2年近くも追いやられている。▼著書を読むと実に国民の目線に沿った、「こんな官僚がもっといたら」と思うような人材なのに、異常事態を国会でも追及されながら、海江田前々大臣は先送り。巨大組織出身の9日大臣にもこの処理はとても無理だろうと、当初から見ていたが、前次官からの退職勧奨を拒否していた古賀氏もついに見切りをつけたと伝えられる。▼さて次の大臣はどうするか。一発逆転があれば、野田内閣もちょっと見直されるのだが、やっぱり無理か。(E)