きょう２日放送される大河ドラマ「江」で、いよいよ丹波生まれの春日局が登場する。徳川家光の乳母として、家光を溺愛したことで知られる。▼手元にあるいくつかの資料によると、体が丈夫でなかった家光を案じた春日局は、粟や麦など７種類の穀類を炊いて食べさせたという。食の細い家光に刺激を与えようと、柿を１００個も食べる大食漢を城に招き、食べっぷりを見せたとも伝わる。▼家光が天然痘を患ったとき、寝ずに看病し、自分の命にかえても守りたいと、薬断ちを誓い、以後、自分の病気には一切薬を飲まなかった話は有名だ。そんな愛情を受けた家光は、春日局が亡くなったとき、７日間、喪に服し、家康の命日の東照宮参詣もとりやめるほど悲嘆に暮れた。▼それと対照的なのは、家光に対して冷たかった生母、江が亡くなった時。折しも京にのぼっていた家光は、江の重体の連絡に接しても騒がず、後に届いた死去の知らせにも「急いで帰っても仕方ない」と、あちこちを見物しながら江戸に戻った。▼春日局は死に臨んで、「西に入る月をいざない法（のり）をこえて　けふぞ火宅をのがれけるかな」と詠んだ。火宅は現世の意味で、苦悩に満ちた現世を火事で燃える家にたとえた語。春日局の生涯を思うとき、まさにこの世は火宅だったろう。（Ｙ）