2013.01.05
丹波春秋

 各家庭の玄関には今も、しめ縄が飾られているだろうが、しめ縄は雌雄2匹の蛇が交合している姿を表わしたものだとする説がある。稲荷神社の神使いがキツネであるように、大神(おおみわ)神社は蛇を神使いにしている。このように太古、蛇は神としてあがめられた。▼梅原猛氏によると、諏訪湖周辺の中期縄文土器は、マムシを図形化した紋様をしているという。体は小さくても、人を殺す毒を持ったマムシ。人間より力が強いものを神とした古代人にとって、マムシは神だった。▼マムシに限らず、蛇そのものも古代人には神としての特性があった。脱皮をし、新しく生まれ変わる蛇は、死んだ後も復活する生命の象徴であった。それは、死によって滅びた肉体から分離した魂が、別の肉体を得て再生するという古代人の死生観に即していた。抜きん出た生命力を、人は蛇に見た。▼詩人の坂村真民氏に「鳥は飛ばねばならぬ」という詩がある。飛ばねばならない鳥のように、人は生きねばならない。たとえ混沌とした世であっても、人は生きねばならない。そのことを真民氏は、「新しい年を迎えた日の朝 わたしに与えられた命題」とした。▼年が明けた。混沌ぶりは変わらず続くだろうが、今年は巳年。蛇の旺盛な生命力にあやかり、力強く生きることを命題としたい。(Y)

 

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