歌人、竹村公作さん

2013.01.19
丹波春秋

 春日町の歌人、竹村公作さんが『ビニールの薄い手袋』と題した第6歌集を角川書店から出された。明快で、それでいて陰りを帯びた竹村さんの歌。印象に残った歌を拾ってみる。▼「たまりたる新聞紐で括りおり過去はきっちり縛っておかねば」。私たちが、過去から呼び戻す思い出のうち90%が嫌な記憶だそうだ。うれしかった思い出、楽しかった思い出よりも、傷つき、憎しみを覚えた思い出の方が心に深く刻まれるということだろう。▼うつを患った医学博士、高田明和さんは「過去は思わず」という言葉を自分に言い聞かせた。言霊(ことだま)のような力があるというこの言葉にも救われ、うつが治った(『元気が出る禅の名言』)。嫌な思い出がよみがえると、再び我が身が傷つく。やはり、過去はきっちり縛っておかねばならぬ。▼「大型のバスのうしろについてゆく前のことなど何も分からぬ」。昨年末に誕生した安倍政権は、経済回復に公共事業を打ち出している。経済界では、安倍政権の政策に歓迎ムードのようだが、公共事業と財政赤字のジレンマにどう決着をつけるのか。▼1997年のニューヨーク・タイムズにこんな見出しの記事が載った。「日本の破産への道は公共事業によって舗装されている」。安倍政権という大型バスについてゆく私たち。前が見えぬ。(Y)

 

関連記事