ある中学校で、学校教育に意見を述べる学校評議員を仰せつかっている。過日、その会合で学校側から示された資料に生徒に対する意識調査があり、「気軽に話せる先生がいますか」という項目があった。余計なお世話と承知しつつ、「気軽に話せる先生とは、生徒と友達のような同等の関係になることではない」と言わせていただいた。▼心理学者の河合隼雄さんは、生徒と同等の立場で生きていると言う先生がいれば、「同等だったら、あなたも授業料を払ってください」と応じたらしい。「生徒が授業料を払い、自分は月給をもらっていながら、『まったく同等』などと言うのはごまかしである」(『こころの処方箋』)▼先生は本来、権威ある存在だ。しかし、進んで生徒と友達関係になるのは、みずから権威を脱ぎ捨てるようなものだ。子どもと友達のような親が増え、親の権威も揺らいでいる現代。先生も権威のない存在となれば、子どもたちはいつどこで権威に出合うのだろうか。▼河合さんは、権威とは「努力によって磨かれるもの」とする。地位から与えられた権威にあぐらをかくことなく、不断の努力で権威を磨く者に、周囲は肯定的な評価を抱く。▼評議員会ではこんな注文もつけさせていただいた。「質問項目に『尊敬できる先生はいますか』を加えてください」。(Y)