北近畿みらい塾で柏原の岸名経夫さんから地元出身の「彫刻師 中井権次」の話を聞き、八幡神社と五社稲荷の建物に施されている4代目(彫刻師としては初代)君音らの作品を見学。▼自宅のすぐそば、子供の頃、遊び場にしていた場所である。それらの彫刻がただならぬものらしいことは近年になって聞いたが、まともに眺めたことはなかった。ところが同社の千種宮司の案内で改めて観ると、成程たいしたものである。今になってかく言うのが、誠に恥ずかしいほどだ。▼ことに、五社稲荷本殿の竜や獅子、象、犀、獏などは、当時いずれも実物など見られない想像上の動物だったはずだが、実に活き活きと、ユーモラスに作られている。11代に至る中井一統の彫刻は丹波・篠山両市内を初め、北近畿のあちこちに散らばっているが、岸名さんによると城崎の温泉寺薬師堂の、5代目正忠による天女、羅漢などの作品群が質量ともに最高という。▼中井家始祖の正清は法隆寺大工の出で、徳川家康に召し抱えられて日光東照宮の造営に関わるなど傑出した人物だったらしく、その子孫が柏原藩に招へいされてきて活躍した。▼全身がぞくぞくしてくるような話ばかりだった。同塾が今年開いた北近畿「先人」シリーズは今10回目で終了。数回しか出られなかったが、実に元気を与えられた。(E)