最大の教育

2013.11.23
丹波春秋

 きょう24日まで植野記念美術館で、篠山市に住む関口寛治さんの喜寿記念彫刻展が開かれている。関口さんは、兵庫県文化賞を受けた彫刻家、初代磯尾柏里の四男で、長く柏原高校の美術部顧問を務めた。▼柏原高に奉職して間もない頃、関口さんは父親について新聞の取材にこう答えている。「親が一生懸命にやっている姿は打たれるものが大いにありますね。何も言われなくても最大の教育です」。▼初代柏里は決して円満な人格者だったわけではないが、彫刻にかける情熱にはすさまじいものがあった。そんな父親のありのままの姿が無言の教育となったのだろう。ありのまま子どもに対する。この姿勢は、親だけでなく学校教諭にも大切だろう。▼思想家の吉本隆明は、先生にとって大事なのは「地」を出すことという。「自分がふだん何を勉強しているか、ふだん何をやっているか、性格はどんなふうか、自分の本来の姿を隠さず出せればそれで十分なのだ」。良き先生に見せようと、いかにとりつくろうとも、生徒は先生の「地」をしっかり見抜く。そして、その「地」こそが最大の教育となる。▼関口さんの彫刻展は、柏原高校美術部の教え子たちが企画し、準備した。教え子がみずから骨を折ったのは、関口先生の豊かな地にひかれ、感化を受けたからに違いない。(Y)

 

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