「清須会議」の信包

2013.12.11
丹波春秋

 上映中の「清須会議」は、本能寺で謀反を起こした光秀が討たれた後、信長亡き後をどうするか、重臣らが集まった評定の場。筆頭だった柴田勝家が、実力、智恵ともに勝る秀吉に押し切られ自国越前に退くところまでが、三谷幸喜らしいコミカルなタッチで描かれている。▼主役の秀吉(大泉洋)、勝家(役所広司)、脇を固めるお市の方(鈴木京香)、丹羽長秀(小日向文世)、池田恒興(佐藤浩市)らに加え、信長次男の信雄〈のぶかつ〉、三男信孝らが彩りを添えるが、中でも注目したいのは伊勢谷友介演じる弟、信包〈のぶかね〉だ。▼信長存命中は片腕的な存在で、この映画でも、兄に劣らぬ華やかな風貌と衣装で登場。権力には恬淡な変わり者の態ながら、秘かに秀吉と通じて一定の役割を果たす。▼史実ではこの後、信包は津15万石の城主となったが、やがて北条攻めや朝鮮出兵の際に秀吉の意に反することをもの申し、煙たがられるようになった。このため一時は京都の寺で謹慎を命じられ、辛うじて丹波柏原藩の大名として復活する。▼先年、茶々(淀殿)やお江ら、お市の3人娘の後見役として大河ドラマに登場した信包は、ホームドラマのパパのようで物足りなかったが、今回の信包はなかなかに気骨を漂わせている。ともかく、今では無名に近くなった彼が、また少しずつ世に出始めたのは嬉しい。(E)

 

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