組織の体質

2013.12.07
丹波春秋

 作家のヘルマン・ヘッセは「運命は心の中にある」とした。「意識が行動をつくり、行動が習慣をつくり、習慣が体質をつくり、体質が運命をつくる」と考えたからだ。ヘッセによれば、運命は自分の体質が引き寄せるもの。運命に恵まれたいならば、相応の体質を培わなければならない。そう思うと、体質とは、ゆるがせにできないものだ。▼体質は、生身の人間だけでなく、組織にもある。組織に属している人たちは、その組織の体質に従って判断したり、行動したりする。その判断や行動が、個々人がそれぞれに持っている規範と隔たりがあったとしても、おうおう組織の体質を優先してしまう。挙句、反社会的な事態として明るみになることがしばしばある。最近、話題になったホテルの食品偽装問題もその一例であろう。▼「人間は組織の中で、自己を組織にまぎれ込ませてしまうと、人間の信義をいつか放擲(ほうてき)して気づかずにいるのではなかろうか」(佐多稲子)。組織に属する者は、この問いかけをよくよく心しなければならない。▼丹波市役所でまたも発覚した水道部の不適切支出。市は「水道部の体質として常態化していた」と認めた。▼どうすれば組織の体質が変えられるか。ひっきょう、体質をつくる根源である個々人の意識に立ち戻らざるを得ないだろう。(Y)

 

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