子ども相撲

2014.02.01
丹波春秋

 弊紙丹波市版の前号で、かつて丹波市では横綱や大関らを招いた大相撲が盛んに行なわれていたとあった。娯楽の少なかった当時、力士を間近に見る機会は最高の娯楽だっただろう。相撲と言えば、子ども相撲も今と違って盛んだった。▼子ども時代の40年以上も前の話。年に1回、日が暮れたころ、近くの神社で子ども相撲があった。隣の村でも違う日に子ども相撲があり、勇んで出かけたものだ。目当ては、お金。勝てば10円、負けても5円をもらえたと記憶している。何度も対戦できたので、いい小遣いになった。▼その懸賞金は、相撲のある日に子どもたちが集落内を回って集金したものだった。一軒一軒訪ねて、夜に子ども相撲があることを伝え、お金をいただいた。大人の付き添いはなかった。▼子どもだけで集金するので、どの家にはどんな人が住んでいるかがよくわかった。子どもと村の人たちとの交流が日常の中で自然に行われていた。当時の親は忙しく、集金に付き添う暇などなかったのだろうが、今に思うと、いい意味での放牧だった。▼心理学者の河合隼雄氏は、豊かな社会の子育ての難しさを説き、「幸いにも昔の親はそれほど豊かでもなく、それほど暇でもなかった」と書いている。親に暇がなかったことを「幸いにも」とされているのがミソだ。(Y)

 

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